ごあいさつ

石橋財団は、優れた企業家で、広く文化事業にも取り組んだ石橋正二郎によって創設されました。東京・京橋のアーティゾン美術館(旧・ブリヂストン美術館)における美術館事業、芸術・文化・教育活動を支援する寄付助成事業を二本の柱として活動しています。この2012年4月には事業の公益性が認められ、内閣総理大臣より公益財団法人に認定されました。

創設者の石橋正二郎に「世の人々の楽しみと幸福の為に」という言葉があります。創設者の事績を振り返りますと、ふたつのことに思い至ります。ひとつは創設者が企業経営と文化事業を両輪とし、特に文化事業では「世の人々の楽しみと幸福の為に」という信念の実現に取り組んだこと、ひとつは常に時代に先がける事業を行ったことです。すなわち、企業経営においては、大正末期から昭和初期にかけて地下足袋とゴム靴の製造によって大衆の履物に変革をもたらし、戦前から昭和後期にかけてタイヤの国産化によって自動車社会の発展に大きな足跡を残しました。一方、文化事業においては、1952年に東京で初めて近代洋画の美術館を開館する、1956年にブリヂストン発祥の地、久留米市に文化センターを建設寄贈して新たな美術館を開館する、同年、美術による国際交流のためベネツィア・ビエンナーレ日本館を建設寄贈する、1969年、東京・北の丸公園に東京国立近代美術館を新築寄贈するなど、次の時代を拓くためのさまざまな事績を残しました。

石橋財団は1956年、創設者の文化事業への取り組みを永続的なものとするため、東京に設立されました。創設以来60年を経て、常に時代に先がけるという創設者の意志を受け継ぎつつ、新しい時代の要請に応えていきたいと考えております。これまでの活動に加えて、特に今後は美術の奥深さとその背景をわかりやすく伝える活動や、文化を通じた国際交流にも力を入れて参ります。

公益財団法人 石橋財団
理事長 石橋 寛